第6巻 受難曲/オラトリオ他


CD1-2 アーノンクール指揮
BWV232 ミサ曲 ロ短調(1749
  自分にとっては鬼門とも言える曲。なにせ中学生の頃からレコード棚にリヒターのLPがあって、
時折取り出すのだけれど、いつもキリエの冒頭でその重苦しさに辟易して針をあげてしまう。
アーノンクールでも基本的イメージは同じ。確かにすばらしい音楽ではあるのだけれど、
幕を通して鳴ってくるような暗さが気になる。これを機にいろいろな解説を読んだのだけれど、
これほどパロディを多用してまで、大ミサ曲をバッハに完成させたものは何だったのだろう?
アーノンクールの演奏はオケ、合唱ともにやや仕上がりのレベルが低い。また編集の責任か、
曲間が短くてこちらに余裕を持たせてくれず、曲の聴きづらさを助長する(2004.03.18)


CD3−4 コルボ指揮
BWV233 ミサ曲 ヘ長調 (
1738-39
BWV234 ミサ曲 イ短調 (
1738
  ミサとはいうものの、ここでのミサ曲はいずれもキリエとグローリアのみで終わる。
そのほとんどがパロディというから、「しおれた切花」みたいな悪口をたたく学者もいたらしい。
聴いた覚えのある音楽もあるが、コルボの演奏はそれらがけして「しおれた」ものではないことを
教えてくれる。ヘ長調は冒頭キリエが比較的聴きなれなくて、かつ立派な音楽である。
イ短調はのどかな響きのキリエ。グロリアは聴いたことのあるパロディだ。
 
アリアで独唱陣のこまかいビブラートが気になる。このあたりはさすがに30年前の演奏らしい。
 そういえばコルボは昨年来札していた。ききのがしたのはちょっとおしかった。
BWV
239 サンクトゥス ニ短調(17438-41)
BWV240 サンクトゥス ト長調 (
1742
BWV241 サンクトゥス ニ長調(1747-48
 1枚目余白のサンクトゥス3つ。これがちっともバッハらしくないと思ったら、案の定編曲らしい。
音の響きはそれらしいのだけれど、楽想が古めかしい感じがする。
BWV241がちょっといいかなと思うと、この曲だけは出典がはっきりしている。
それでも100年前の作品だ。(2004.03.31)

BWV236 ミサ曲 ト長調 (1738-39
BWV235 ミサ曲 ト短調 (
1738-39
CD4の二つのミサは全曲がパロディ。とはいえどちらも堂々たるキリエなど説得力ある改作。
ト長調は、そのキリエと活発なグロリアの対比が生きる。ト短調はオブリガード付きの美しいアリアが3つ続く。
BWV238 サンクトゥス ニ長調(1723
BWV242 クリステ・エレイソン ト短調 (
1727-32
BWV237 サンクトゥス ハ長調(1723
2枚目の単独楽章はバッハの真作とされている。コルネット(ツィンク)の付いたBWV238、
12拍子のBWV242、トランペット、打楽器も加わったBWV237とそれぞれ楽しめる。
(2004.04.03)


CD5 アーノンクール、プレストン指揮
BWV243 マニフィカト ニ長調 (
1733
バッハの声楽曲の中では147番や「コーヒー」カンタータと並んで親しみやすい曲だろう。
アーノンクールの演奏はアンサンブルの精度が悪く、いつものメリハリが今ひとつ中途半端で物足りない。これならカラヤンくらいにゴージャスにやってくれたほうがいい。
BWV243a マニフィカト 変ホ長調 (
1723
 
クリスマス用の挿入曲を含む初稿版はリリングの録音を、エア・チェックのカセットで聴いている。
この全集ではデッカからプレストンとエンシェント室内管の登場である。少年合唱がちょっと素人っぽいが、アーノンクールに比べてこちらのほうが挿入曲の楽しさなど雰囲気がよい。(2004.04.07)


CD6−8 アーノンクール指揮
BWV244 マタイ受難曲 (
1727
全153枚のバッハ2000の中間点77枚目はアーノンクールの「マタイ」。
第1巻のカンタータからBWV番号順に聴いてきてこの場所にこの曲が来るというめぐり合わせ。
しかし実際には若い番号のモテットがこの後に来るので、やっぱり図ったかな?という気もする。
演奏は1970年のピリオド楽器による「マタイ」初録音となったものだ。
70年代初め、ゲテモノ扱いの場合もあったアーノンクールだが、今聴くと中庸ともいえる名演。
特徴は低音部の短いアタックと、短いアーティキュレーションを積み重ね、息の長いフレージングを
作り上げる凄腕にある。印象に残るのはイエスのレチタティーヴォでの弦楽器の表情の豊かさ。
聖人イエスの後光というよりは受難に向う葛藤を表すかのような和音のぶつかり合いを聴かせる。
声楽陣で特筆すべきはソプラノパートを受け持つウィーンの少年たち。
エヴァンゲリストが常に冷静さを保っているのも効果的だ。
リッダーブッシュが神妙にイエスを歌うのが少し微笑ましい。
中学生での生演奏体験から多くの演奏を聴いてきたこの曲。
メンゲルベルク、クレンペラー、カラヤン、リリング、レオンハルト・・・。
いろいろな表現のあり方を受け入れる不思議な、ふところの深い音楽である。(2004.04.10)


CD9−10 アーノンクール指揮
BWV245 ヨハネ受難曲 (
1724
「マタイ」とくれば当然次は「ヨハネ」。小学生のときから聴いていた「マタイ」にくらべれば、
はるかに接した回数は少ない。たいていは冒頭合唱を聴いてあとは記憶なしである。
情感深いアリアの多いオペラティックな「マタイ」にくらべれば、「ヨハネ」はレチタティーヴォや合唱で
ドラマティックに展開していく感が強い。ふところが深いと持ち上げた「マタイ」も俗っぽいということか。
「ヨハネ」で聴かれるアリアは全体の進行の劇的さ故に「マタイ」以上に叙情的で美しく感じられる。
絶品は第2部のテノールのアリア。先立つバスのアリオーソと合わせこんな美しい音楽があったとは!
これからは「マタイ」以上に?まじめに聴かねばと再認識した一作。(2004.04.25)


CD11−12 アーノンクール指揮
BWV245 ヨハネ受難曲 (
1734
冒頭合唱をはじめほとんどの曲がカンタータのパロディで占められているだけに
覚えのある音楽が続く、しかもクリスマスであるから底抜けではないが明るい楽想。
実に心地よい。実はこのアーノンクールのCD、かなり以前に手許にあったのだけれど、
聴くのは最初と最後の合唱だけ。今思うと無知とはいえ実にもったいない。
例のごとくあまり上手くないトランペットは気になるが、
ウィーン少年合唱団を軸にした声楽陣が充実している。(2004.05.03)


CD13 レッツボール(BWV1083)、シュライヤー指揮
BWV1083 拭い去りたまえ、いと高き御神よ(1746-7
  美しくて聴き覚えのあるが、バッハらしくない序奏だなと思えば解説によればペルゴレージの
「スターバト マーテル」の編曲。五年に一度くらいは聴くチャンスがあったろうか。
終曲の「アーメン」は映画「アマデウス」で使われていた。作曲の10年ほど後の編曲であるから
作曲当時からよく知られていたのだろう。ブルックナーゆかりの修道院の名を持った少年聖歌隊は
なかなか澄んだいい声。なぜか作品番号は1083、ここで初めて聞き覚えのない指揮者が登場した。
BWV245a,b,c 「ヨハネ受難曲」第2稿からのアリア(1725
  初演の翌年の再演にあたり、改作、追加された6曲のうち3曲がシュライヤー指揮で聴ける。
中ではコラール付きのバスのアリアがドラマティック。ソロがいいと思えばオラフ・ベーアが歌っている。
バリトンでなかったっけ?(2004.05.08)


CD14 コープマン指揮
BWV249 復活節オラトリオ(1725
  「マニフィカト」とセットでリリングのエアチェック・テープがどこかにあった曲。
コープマンはタイトルと楽器編成から予想されるようなドンチャン騒ぎを控えたシンフォニアでスタート。
むしろ中間の情感豊かな3つのアリアに重きをおいているかのよう。3番目のアルトのアリアの序奏は
ペルゴレージ(だったかな?)のオペラのアリアに似たリズム。終曲もトランペットを抑え気味にして、
節度ある?盛り上げ方で曲を閉じる。(2004.05.15)


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