第5巻 世俗カンタータ 他


CD1 コープマン指揮
BWV134a カンタータ「日々と歳月を作り成す時間は」(1719
  エラートからコープマンの登場である。例によって?雄弁な御大のチェンバロが目立つ。
第2曲のアリアでの”auf”の連呼は宗教カンタータの巻で聴いたとき、子供がまねをしていたのを思いだす。
2つめのアリアは確かこの後「狩のカンタータ」似たようなのがあったような気がする。(2003.09.23)

BWV173a カンタータ「いと尊きレーオポルド侯よ」(1722)
  前曲同様に、宗教カンタータの巻で聴けた曲。いずれもこちらのほうがオリジナルらしい。
なのに作品番号では”a”がつけられ、こちらが「分家」のような扱いである。
演奏は穢れなき?子供の声が入っていない分、宗教カンタータとはやはり違ったものになってくる。
(2003.10.02)


CD2 コープマン指揮
BWV201 カンタータ「急げ、
渦巻く風ども」(1729
  引き続いてコープマン登場、冒頭合唱はぐるぐるとめまぐるしく器楽が動き回り渦巻きを描写する。
ここでの合唱がいまひとつ整理されていない妙な響きに聴こえるのは男声が4部にわかれるためか?
「音楽劇」という言葉を意識してか、オペラ、あるいはオラトリオ風な雰囲気もあり、趣向をこらした各アリアが
楽しめる。しかしそこにこめられたメッセージは当時の音楽界の対立という。(2003.10.23)

BWV204 カンタータ「われはおのがうちに満ち足れり」(1726-7)
  ソプラノ独唱と小編成の伴奏による作品、貧しきものに心の富を与える天と神に感謝、というわけで
ソプラノらしい華やかさを抑え、技巧的には動きが多くとっつきにくそうなレチタティーヴォとアリアが続く。
アリアは声と伴奏の管楽器のからみが美しいが、延々と続くのも付き合いにくい。ソロは手堅く好演。
(2003.10.24)


CD3 シュレーダー(202)、レオンハルト指揮(203,9)
BWV202 カンタータ「
しりぞけ、物悲しき影」(1730
  いわゆる結婚カンタータである。1967年と少し昔の録音であるがシュレーダー指揮の演奏は、
感覚的に古さは感じない演奏、小編成のバックでオーボエがよく歌っていてすばらしい。
この第1曲をききながら床に就くのがここ数日のお約束である。ただソロは丹精だが若々しさがもう少しほしい。(2003.11.09)

BWV203 カンタータ「裏切り者なる愛よ」(〜1723)
  バス独唱とチェンバロのみによる編成、6分ほどのアリアが短いレチタティーヴォをはさむ3曲と
簡素な作品。歌詞はイタリア語で次の209番の結婚カンタータもイタリア語である。
レオンハルトがしっかりとした音楽でソロをサポート、というよりはリードする。
ただし偽作の疑いもあるとか。(2003.11.13)

BWV209 カンタータ「悲しみのいかなるかを知らず」(1734)
  別れの悲しみを綿々と綴りながらも、最後には新たなる門出を軽やかに祝う結婚カンタータ。
小編成の弦をバックに活躍するフルート独奏が憂いを含んだ曲想にはまっている。
202番に続いてギーベルの端正な歌唱がすばらしいのだけれど型にはまりすぎて、
やっぱりちょっと窮屈に感じる。(2003.11.18)


CD4 ゲーベル(207)、リュー(206)指揮
BWV207 カンタータ「
鳴り交わす絃の相和せる競いよ」(1726
  バッハとしては勇壮な行進曲で始まる。続く合唱はブランデンブルク協奏曲第1番のメヌエットの
パロディ。途中の器楽部分では続く第4楽章の第3トリオも引用される。音楽劇の副題にふさわしく、
劇的な要素が強い。ゲーベルの演奏は彫りの深い、ダイナミックな音楽作りを聴かせる。(2003.11.27)

BWV206 カンタータ「しのび流れよ、戯るる波」(1740)
  3つの川がザクセン侯アウグストを争うという内容。調停役にはさらに第4の川が登場してきて
最後は四重唱でめでたし、めでたしとなる。それぞれの川の言い分はレチタティーヴォと長いアリアで
述べられる。リューという指揮者は初耳だが、冒頭合唱の川のうねりを表すようなスケールの大きさが
印象に残る。ところでこの1枚、2曲なのになぜBWV番号を逆にならべたのだろう?(2003.11.30)


CD5 アーノンクール指揮
BWV205 カンタータ「
破れ、砕け、壊て」(1725
  冒頭合唱はほとんど「マニフィカト」の乗り、ただしアーノンクールは悪乗りしずぎて響きがきたない。ラッパとテインパニグループは、レチタティーヴォにも強烈に割り込んでくる。おそるべし風神のパワーである。これも音楽劇で起伏のある展開だが、その長さのせいか珍しく少々退屈した。(2003.12.03)

BWV211 カンタータ「おしゃべりはやめて、お静かに」(1734頃)
  曲の内容、規模ともに親しみやすいこの曲は、フォスター指揮のLP盤を中学生の頃から聴いている。ミニ・オペラのように上演されることもあるらしいが、アーノンクールには寸劇風に演奏したビデオがあって、コープマンの同様の映像とあわせてみるのだけれど、F=ディースカウ等による「はまりすぎた」演奏の印象にはなわない。ただしこの演奏でのリースヒェンのアリアは秀逸。(2003.12.13)


CD6 コープマン指揮
BWV207a カンタータ「
いざ、勇ましきラッパの嚠喨たる調べよ」(1735
  CD4で聴いた曲のパロディ、「ブランデンブルク」の引用もそのままであるが、響きはぐっと変わる。コープマンはオケの薄手の響きを自らの雄弁なチェンバロで彩り、支えながら曲を進める。この点で先のゲーベルとは対照的である。トランペットの軽い華やかさはバッハとはちょっと違うかなと思うほど。歌詞はザクセンのアウグスト公を称えるもので、その名が何度も耳に入ってくる。(2003.12.13)

BWV210 カンタータ「佳き日、めでたき時」(1740頃)
  ソプラノ独唱と小編成の伴奏による「結婚カンタータ」だが、ソロが技巧的な点で際立っている。アリアで活躍する管楽器のソロは控えめに音が録られていて、声を引き立てる形になっている。前曲に続いてリュート、バロックギターの使用が新鮮な響きを聴かせてくれる。おだやかな曲想は推進力の強い終曲のアリアが打ち破る。(2003.12.19)


CD7 アーノンクール指揮
BWV208 カンタータ「
楽しき狩こそわが喜び」(1713
  ストコフスキーが編曲して、朝のFMのバロック音楽番組のテーマになったポピュラーなアリアを含む曲。音楽の楽しさでは随一ではないか。この1枚は以前から持っていた。最初のアリアを歌うイヴォンヌ・ケニーが絶好調で、ホルンも格好いい。初演の時には「ブランデンブルク」第1番の異稿がシンフォニアとしておかれたのだからさぞ盛り上がっただろう。(2003.12.22)

BWV212 カンタータ「わしらの新しいご領主に」(1742)
  フォスターのLPで「コーヒー・カンタータ」とのカップリングの曲だったが、こちらのほうはめっに聴くことが無い。短い曲が多いスタイルが自分にはインパクトに欠ける感じがするからだろう。そしてこの曲でも、オットー、F=ディースカウの印象はあまりにも強すぎる。(2003.12.29)


CD8 コープマン指揮
BWV213 カンタータ「
われら心を配り、しかと見守らん」(1733
  3拍子でなだらかな曲線を描く冒頭合唱。聞き覚えがあるのでどこかにCDがあっただろうと探すが見当たらない。クリスマスオラトリオに転用されたというからその記憶かもしれない。途中のこだまが聞こえるアリアなど音楽的には魅力的だが、コープマンの演奏は温和で、少し物足りない。(2004.01.17)


CD9 コープマン指揮
BWV214 カンタータ「
鳴れ、太鼓よ!響け、トランペットよ」(1733
  ほとんどがクリスマス・オラトリオに転用された1曲。冒頭合唱は「クリスマス・オラトリオ」のそれと
同じだが、、華やかなトゥッテイの中でリュートがしゃかしゃかと聴こえるのに笑ってしまう。
音楽劇というけれど、女声陣の歌は珍しくやや表情過多。王妃への賛歌だからやむを得ないか?
終曲の念を押すような音符の扱いがどこかで聴いたような気がしてらく気になったのだけれど、ヘンデルの「水上の音楽」でなかったかしら。(2004.01.22)

BWV215 カンタータ「おのが幸を讃えよ、祝されしザクセン」(1734)
  実質的にカンタータ最後の番号である。前曲に続いてトランペットが華やかに活躍する。
ただし初演の時はたいまつを焚いて演奏したものだから?翌日トランペット奏者が亡くなったという。
前曲で讃えられた王妃のだんな様への賛歌とあって、同様の編成ながら二部合唱の第1曲をはじめ、
男声を中心に曲の作りも大きくゆったりとした感じがする。(2004.01.29)


CD10 コープマン指揮
BWV190 カンタータ第190番「
主に向かいて新しき歌を歌え」(1724
  この1枚は伝承が完全でない曲をコープマンが復元した3曲を集めている。まずは新年のカンタータ。コープマンが例によって楽しそうに指揮する姿が目に浮かぶけれども、叙情的な部分はいいとして、
合唱部分でトランペット、打楽器をはじめオケの響きがちょっと派手すぎないかなと思う。(2004.02.20)

BWV191 カンタータ第191番「いと高きところには栄光神にあれ」(1743-46)
  タイトルどおりラテン語の歌詞でグロリアが歌われる。ロ短調ミサのパロディがメインの作品。
説教をはさんで演奏されたらしく、3曲と短いが使っている曲が曲だけに華やかである。
(2004.02.23)

BWV193 カンタータ第193番「汝らシオンの門よ」(1726-7)
  191番と同じ楽器編成の曲だが、こちらはやや力が抜けていて鳴り物入りの合唱も軽い足取り。
先の2曲の演奏に比べて淡白なので、女声独唱陣のアリアが逆に物足りない感じもする。
終曲は第1曲の繰り返しだが、ティンパニの扱いなど細かいところは細工している。
(2004.02.27)


CD11 コープマン、シュライヤー、ヴェルナー指揮
BWV63,182 再演時の異稿(1729,28
  埋め草のような1枚?最初に二つの作品の再演にあたっての異稿をあわせて3曲。
このくらいなら、全曲演奏と併せて聴けるように収めればいいのに・・・。
コープマンはエラートだから難しかったのかしら?。182番のシンフォニアは聞き覚えがある。(2004.03.07)

BWV36c カンタータ「喜び勇みて羽ばたき昇れ」(1725)
  BWV36というから2年くらい昔に聴いたはず、もちろんどんな曲だったかなんて記憶にない。
しかし原曲に"C"が付くというからBWV番号のつけ方は妙である。教会カンタータ優先ということか?
音楽は冒頭合唱他でオーボエダモーレが技巧的にかけめぐる。シュライヤー率いるベルリンの
音楽家達の演奏はリヒターのように重すぎず、自分には安心して聴いていられる。
ただしマティスはちょっと力みすぎるかもしれない。(2004.03.10)

BW200 カンタータ第200番「われはその御名を言い表さん」(1742?)
  1924年にただアリア1曲だけ発見された、断片だけの作品。ヴェルナーによる録音は1967年。
歌、伴奏ともにの恰幅のいい昔風の演奏は、カンタータ全巻の締めくくりには似合っているかもしれない。
(2004.03.12)


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