第8巻 オルガン曲
やっと取り掛かるオルガン曲、独奏は愛すべきひょうきん親父、
豚生協男=トン・コープマンであります。
CD1
BWV542 ファンタジーとフーガ ト短調
BWV578 フーガ ト短調
BWV588 カンツォーナ ニ短調
BWV544 プレリュードとフーガ ロ短調
BWV543 プレリュードとフーガ イ短調
BWV562 ファンタジー(とフーガ) ハ短調
BWV531 プレリュードとフーガ ハ長調
BWV572 ファンタジー ト長調
BWV570 ファンタジー ハ長調
BWV582 パッサカリア(とフーガ) ハ短調
やっととりかかるオルガン曲の巻、初めは堂々たる響きでスタート。
2曲目は有名な「小フーガ」、最後の大曲はトスカニーニもオケで取り上げていた。
コープマンの演奏はこの人にしては奇をてらったところのない正攻法。
堂々たる響きと鈍重さが紙一重の大らかさで時に繊細さがほしいかな・・・。
(2008.02.02)
CD2〜3
BWV645〜650 シュープラー・コラール
BWV651〜668 ライプツィヒ・コラール
この2枚はオルガン・コラール集とその周辺というべきか?
各曲の前後に由来するコラールがつつましやかに歌われる。
カンタータをとりあえず制覇した耳には馴染みのある響きがする。
全体として、若いころの作品を後年補筆したものというライプツィヒ・
コラールの方が曲数も多いとはいえ多彩な響きが聴かれる。
CDや解説では「18のライプツィヒ・コラール」とあるけれど、
バッハの絶筆とされるBWV668を除く17曲をでくくるのが今のスタンダードらしい。
ここではBWV668=「汝の御座の前にわれはいま進み出で」を1曲目に持ってきている。
そういえばこのコラール、「フーガの技法」の最後に演奏されるのではなかったかしら?
(2008.02.08)
CD4
BWV525〜530 6つのソナタ(トリオ・ソナタ)
バッハ作品番号順でいくと本来オルガン曲の1枚目となるべき1枚。
オルガン1台で演奏するトリオソナタということで、パイプオルガンらしい分厚い響きよりは、
重厚さのないすっきりとした響きで、音楽の色彩的な面よりは構成の緊密さに注意が行く。
フーガ的な展開で小気味よい急速な楽章と、叙情的な緩除楽章の対比がすばらしい。
しかしながら、第1番変ホ長調の冒頭が「あっ・るっ・こー!あっ・るっ・こー!」だったり、
最後のト長調の冒頭に「ぴっ、ぴっ、ぴーよこちゃんじゃ・・・」と聴く自分は×か・・・。
(2008.02.14)
CD5
BWV540 トッカータとフーガ へ長調
BWV565 トッカータとフーガ ニ短調
BWV564 トッカータ、アダージョとフーガ ハ長調
BWV538 トッカータとフーガ ニ短調(ドリア調)
BWV566 プレリュードとフーガ ホ長調
BWV532 プレリュードとフーガ ニ長調
トリオソナタに比べるとこの1枚音楽はなんとも「パイプオルガン的」響き。
2曲目は超名作「鼻から牛乳」!しかしここでのコープマンはちょっと凝りすぎだ。
1曲目のヘ長調のトッカータとフーガのスケールの大きさに惹かれる。
ゴージャスな最初2曲だけで聴き手が力尽きてしまいそうな1枚だ。
(2008.02.20)
CD6〜7
クラヴィーア練習曲集 第3巻
BWV552/1 プレリュード 変ホ長調
BWV669〜689 オルガン・コラール
BWV802〜805 4つのデュエット
BWV552/2 フーガ 変ホ長調BWV769a カノン風変奏曲 「高き御空よりわれは来たり」
練習曲としては、立派なプレリュードで始まる。
オルガン・コラールは前半の9曲はミサ曲を意識したもので、
後半は同タイトルで規模が大小の曲がふたつずつ。
この部分には練習曲としての意味と、宗教的な意味も含ませているらしい。
平易なデュエットに続いて、ふたたび立派なフーガが最後にやってくる。
カノン風変奏曲は「音楽学術協会」入会の際の名刺代わり?の献呈作品。
実際後半の変奏にはBACHの音形が含まれているとのこと。
(2008.02.24)
CD8
BWV546 プレリュードとフーガ ハ短調
BWV575 フーガ ハ短調
BWV549 プレリュードとフーガ ハ短調
BWV568 プレリュード ト短調
BWV589 アラ・ブレーヴェ ト長調
BWV535 プレリュードとフーガ ト短調
BWV550 プレリュードとフーガ ト長調
BWV533 プレリュードとフーガ ホ短調
BWV569 プレリュード イ短調
BWV537 ファンタジーとフーガ ハ短調
3年のブランク直後のリスタート、さすがにいいペースである。これが節目の100枚目。
堂々たるプレリュードに始まる、正直に言えばこの響きは個人的にはちょっと重たい。
フーガで気分転換ができればいいのだけれど、大抵は重い気持ちをひきずったままで終わる。
曲の並びとこちらの気分次第ではそれが1枚続く。風邪気味の今の身体にはあまりよろしくない。
そんな中で中間に聴けるBWV589、BWV550の二つのト長調の明るく、軽いところが救い。
ただし前者には偽作の可能性ありとか。
(2008.02.28)
CD9
BWV545 プレリュードとフーガ ハ長調
BWV577 フーガ ト長調
BWV583 トリオ ニ短調
BWV598 ペダル練習曲 ト短調
BWV541 プレリュードとフーガ ト長調
BWV539 プレリュードとフーガ ニ短調
BWV534 プレリュードとフーガ へ短調
BWV590 パストラーレ へ長調
BWV547 プレリュード とフーガ ハ長調
長調の曲が過半数をしめるこの1枚は比較的に軽快なフットワークを持つ曲が多い。
コープマンが身体を小刻みにゆらして、楽しそうな表情で弾いているのが目に浮かぶ。
4曲からなるパストラーレの終曲はブランデンブルク協奏曲第3番の一節にそっくり。
さらに驚いたことに、第3曲が名作アニメ「ルパンV世カリオストロの城」で使用されたとか。
(2008.03.07)
CD10
BWV599〜644 オルゲルビュッヒライン(オルガン小曲集)
その昔、リリングが原コラールと合せて録音したLP4枚組のセットがあった。
ずいぶんそれを欲しがっていたが、いつの間にかそんな思いも失せてしまっていた。
作曲者は当初160曲ほどの大きな小曲集の構想を持っていたらしい。
作られたのは45曲。なかなか凝った曲想だが、2分前後の短い作品ばかり。
半端な聴き手には要領を得ぬまま終わってしまう1枚。
これで102枚目、あと三分の一・・・。 (2008.03.13)
CD11
コラール・パルティータ
BWV768 「安かれ、慈しみ深きイエスよ」
BWV770 「ああ罪人なるわれはなにをなすべき」
オルガン・コラール
BWV729、707、708、763、Anh.U74
コラール・パルティータ
BWV766 「汝明るき日にていますキリストよ」
オルガン・コラール
BWV706、728、691、690、705
コラール・パルティータ
BWV767 「おお神よ、汝慈しみに富たもう神よ」
コラール・パルティータは、短い10楽章前後からなる変奏曲。
原コラールの旋律を意識できる分、先の1枚に比べれば集中力が維持しやすい。
オルガン・コラールでは華々しさてんこ盛りのBWV729が楽しい。
解説には「甘シキ喜ビニ包レ」とカタカナまじりに表記されている。
バッハがたびたび使った名コラールによるBWV763を含め、
数曲の偽作を含む1枚。(2008.03.20)
CD12
オルガン・コラール
BWV711、717 「いと高きところには神にのみ栄光あれ」
BWV730、731 「いと尊きイエスよ、われらはここに集いて」
BWV740 「われら皆一なる神を信ず」
BWV696 「キリストをわれらさやけく頌め讃うべし」
BWV1085 「おお、神の小羊、罪なくして」
BWV741 「ああ神よ、天より見そなわし」
BWV739 「輝く暁の明星のいと美わしきかな」
BWV740 「神を讃えまつれ、汝らキリストの徒よ、こぞりて」
BWV695a、718 「キリストは死の縄目につながれたり」
BWV698 「主キリスト、神の独り子」
BWV725 「主なる神よ、汝をわれらは讃えまつらん」
BWV726 「主イエス・キリストよ、われら顧みて」
BWV736、735 「われは汝に別れを告げん」
BWV721 「われを憐れみたまえ、ああ主なる御神」
BWV738 「高き天よりわれはきたれり」
BWV758 「おお父、全能なる神よ」
BWV754 「いと尊きイエスよ、われらここに集いて」
BWV733 「わがこころは主をあがめ」↑疲れた・・・。感想は短く(^^;
日本語では「オルガン・コラール」とくると、背筋を伸ばさなくてはいけないかなと感じるが、
横文字では"Chorale arrangements"。受け取る雰囲気はずいぶんと変わる。
収められた22曲は最短で1分から最長は10分半とさまざま。
曲想も厳かなものはさておき、ここではむしろ細かい動きで華やかさを感じるものが多い。
コープマンは、曲によってはストップで大きく音を変えその変化を浮かび上げる。
これも数曲の偽作を含む。(2008.04.26)
CD13
オルガン・コラール
BWV737 「天にましますわれらの父よ」
BWV719 「かくも喜びに満てるこの日」
BWV1090〜1100 「ノイマイスター・コラール集」より
BWV714 「ああ主にいます神よ」
BWV742 「ああ主よ、哀れなる罪人なるわれを」
BWV1101〜1117 「ノイマイスター・コラール集」より
BWV957 「神よ、汝の慈しみによりてわれをあしらい」(フーガ ト長調)
BWV1118〜1120 「ノイマイスター・コラール集」より全31曲のノイマイスター・コラール集に5曲のコラールを織り込んだ1枚。
作品番号が後ろの方なのは1984年に発見?されたためだそうだ。
ノイマイスターは筆写したオルガニストの名前。曲バッハ10代の作品とされる。
先の1枚に比べて一気にいくにはちょっと短調なのは若書きのためより、
自分の気合不足だろう。(2008.05.09)
CD14
オルガン・コラール
BWV709 「主イエス・キリストよ、われらを顧みたまえ」
BWV720 「われらが神は堅き砦」
BWVAnh.U74 「われらが神は堅き砦」
BWVAnh.U58 「イエスよ、わが喜び」
BWVAnh.U50 「主よ、われらを汝の御言のもとに保ち」
BWV757 「ああ、主なる神」
BWV734 「いまぞ喜べ、汝らキリストのともがらよ」
BWV755 「喜べ愛する信者よ」
BWV697 「イエス・キリストよ、讃美を受けたまえ」
BWV743 「ああ、されど我らが生命の何なるか」
BWV747 「われらを救い給うキリスト」
BWV765 「我ら皆唯一の神を信ず」
BWV702 「幼児イエスこそ、わが慰め」
BWV724 「神の子は来たりたまえり」
BWV722 「讃美を受けたまえ、汝イエス・キリストよ」
BWVdeest 「われ汝に呼ばわる」
BWVdeest 「わがいとしの神」
BWV716 「いと高きところには神にのみ栄光あれ」
BWV713 「イエスよ、わが喜び」
BWV762 「天にまします我らの父よ」
BWV712 「主よ、われ汝に望みを抱けり」
BWV756 「今すべての森、静かなり」
BWV750 「主イエス・キリスト、我が生命の光」
BWV749 「主イエス・キリスト、我らを顧みたまえ」
BWV700 「高き天よりわれは来たり」
BWV701 「高き天よりわれは来たり」
BWVdeest 「わがいとしの神」
BWV704 「讃美を受けたまえ、汝イエス・キリストよ」
BWV703 われ汝に呼ばわる」
BWVdeest 「わがいとしの神」
BWV704 「全能の神に讃美あれ」
BWV703 「神の子は来たりたまえり」
BWV727 「心よりわれこがれ望む」
BWV694 「われはいずこにか逃れゆくべき」
BWV715 「いと高きところには神にのみ栄光あれ」↑全32曲、各曲は個別に伝承されたもののようで、「ノイマイスター・コラール集」みたいな省略は不可の模様・・・。
"BWV deest"とは「BWV番号なし」との意味らしい。ようするに整理されていない作品ということか。
こうして取り上げているのだから、偽作の可能性は少ないのだろう。
何万もあるわけじゃないのだから、さっさと付番してあげればいいのに・・・。
オリンピックのメダルじゃないから「偽作判明のため、BWV番号をはく奪、deestの作品に振替ます」なんていう事はないか。
覚えのある旋律が聴こえるのは少数。
こうなるとちょっと曲が短すぎて音楽への感慨が浮かばぬうちに終わってしまう。(2008.08.30)
CD15
BWV548 プレリュードとフーガ ホ短調
BWV561 ファンタジーとフーガ イ短調
BWV553〜560 8つのプレリュードとフーガ
BWV571 ファンタジー ト長調
BWV591 小さな和声の迷宮
BWV594 協奏曲 ハ長調
6枚ぶりにコラールの世界を離れた1枚。冒頭のBWV548は久々に聴く豪壮な「大曲」。
続くBWV561では繊細さが勝る。8つのプレリュードとフーガは、長調の曲を中心に軽めな響きが心地よい。
BWV591はタイトルが面白いが偽作の疑いありらしい。確かに後半の細切れな部分などはちょっとらしくない。
最後の協奏曲はヴィヴァルディの協奏曲の編曲。ほどよい重さがあって結構「バッハバッハ」している。
深刻ぶらないコープマンにふさわしい?選曲の1枚。(2008.09.03)
CD16
BWV592 協奏曲 ト長調
BWV563 ファンタジーと模倣曲 ロ短調
BWV551 プレリュードとフーガ イ短調
BWV595 協奏曲 ハ長調
BWV574 フーガ ハ短調
BWV576 フーガ ト長調
BWV596 協奏曲 ニ短調
BWV579 フーガ ロ短調
BWV536 プレリュードとフーガ イ長調
BWV1121 ファンタジー ハ短調
BWV597 協奏曲 変ホ長調
BWV593 協奏曲 イ短調
オルガン曲最後の1枚。コープマンのオルガン曲全集録音としては、先の1枚と合わせて締めくくりの第12巻。
編曲物=協奏曲を中心にした落ち穂拾いの巻末というには失礼な、スケールの大きい立派な演奏内容。
音楽の充実は研究という目的があっての編曲のためだろうか?
華麗なト長調のフーガの後にはトスカニーニが取り上げたことのある「調和の霊感」が続く。
第2楽章終盤のオルゲルプンクトが効果的に鳴らされていた。
ただし、締めのもうひとつ「調和の霊感」、
訳あって楽譜が結構頭に入っている曲だけに、この曲だけちょっとテンション低めなのが残念(2008.09.13)