第10巻 室内楽曲/器楽曲
やはり、完結させなきゃということで、久しぶりのバッハ2000、残るはあと2パート。
「室内楽曲/器楽曲」という分け方は、このジャンルが比較的寡作だったということかしら・・・。
以前なら、・・・?!22枚もあるよ・・・ここも苦手なジャンル・・・orz
というノリになるのだが、自分も生誕55年。
こういう音楽が馴染み易くなってきているかもしれない。
CD1 リュート作品
BWV995〜997 リュート組曲
ピアンカ(リュート)、バルキ(ラウテンヴェルク)
スタートは自分としてはなじみの無い「リュート組曲」、3曲とも短調である。
冒頭、ト短調の組曲はチェロ組曲の編曲。
リュートの音は自分にはかなり重く、暗く、深いものを感じるのだけれど、
時に、残念なことに鈍く、退屈にも聴こえる。
2曲目のホ短調で、がらりと響きが変わって驚かされる。
よくよく見ると、楽器、奏者が違うらしい。
解説には3曲それぞれに、BWV995(リュートのための)、
BWV996(ラウテンヴェルクのための)、
BWV997(ラウテンヴェルク[Fuga,Double]とリュート[Prelude,Sarabande,Gigue]のための)とある。
ラウテンヴェルクとは、リュートの弦を張ったチェンバロだそうで、
チェンバロよりはやわらかいというか、丸いと言うか、ほわーんとした響きである。
BWV996の筆者譜には「ラウテンヴェルクのための」という書き込みがあるそうで、
また、BWV997には一部通常のリュートでは演奏ができない部分があって、
そこで、現存していなかった、ラウテンヴェルクの使用が想起されたらしい。
復元されたラウテンヴェルクによる「リュート組曲」はBWV995とは全く違う世界が展開され、
堂々たるBWV996の終曲など、リュート作品として受け取るには違和感を感じざるを得ない。
両者のコラボによる、BWV997のFugaの推進力は圧巻。(2017.05.03)
CD2 リュート作品
BWV998 プレリュード、フーガとアレグロ変ホ長調
BWV999 プレリュードハ短調
BWV1000 フーガト短調
BWV1006a 組曲ホ長調
バルキ(チェンバロ)、ピアンカ(リュート)
いきなり響くのはチェンバロのなかなかゴージャスな響き。
バッハ自ら「リュートまたはチェンバロ用」と記しているとか・・・。
なら、ここではリュートで頼むよ・・・。
ただ、これリュートでやるのって難しいかな?
というくらいのゴージャスさである。、
「スリーナイン」のハ短調は短いけれど、「平均律」を思い起こす充実感。
「記念すべき?」BWV1000は、ヴァイオリンの無伴奏の名高い一節。
ちょっと拍子抜けしたけれど、この微妙な色っぽさはヴァイオリンを上回るか?
アンコールにボリュームを上げて聴いたが、ますます心地よい・・・。
次は5つ飛ばして1006aは無伴奏ヴァイオリンでおなじみの作。
前作同様、ややメリハリに欠けるが、個人的には程よい色気がよろしい。
とばした分は次のシリーズでヴァイオリンが埋めてくれて、
その最後にヴァイオリンでアンコール・・・(2017.06.26)
CD3 無伴奏ヴァイオリンのためのソナタとパルティータ
BWV1002 パルティータ第1番ロ短調
BWV1001 ソナタ第1番ト短調
BWV1003 ソナタ第2番イ短調
ツェートマイヤー(ヴァイオリン)
なんと言うべきか、深長、遠大な音楽である。
どんなに、テクニックが素晴らしくても、
若き日のハーンなどには全く手に負えない音楽であった。
そういえば、今のヒラリーならどうなのかしら・・・。
自分の愛聴するのは、ムローヴァの演奏。
ある意味、無手勝流とも言える自然体に惹かれる。
BACH2000では、ソナタではなく、パルティータの1番がいの一番に流れて、意表をつかれる。
このアルバムだけ聴くなら有りだろうが、153枚の道のりの一シーンとしてはいかがなものか・・・。
それを別にしても、ツェートマイヤーの演奏は、ちょっとやんちゃに過ぎる。
特にソナタでのフーガの強奏の音楽の造り、こんなに角の立つ音楽になるのか?
一方、強烈なフーガの後、経過句の静寂のシーンでは緊張感の欠如が著しい。
もちろん、その押し出しの強さに、惹かれる方も多いだろうが、
無伴奏というカテゴリーでは、自分的にはよりピュアな世界を期待したい。(2017.07.03)
CD4 無伴奏ヴァイオリンのためのソナタとパルティータ
BWV1004 パルティータ第2番ニ短調
BWV1005 ソナタ第3番ハ長調
BWV1006 パルティータ第3番ホ長調
ツェートマイヤー(ヴァイオリン)
さて、いままでなら、こういう「くくり」はまとめて書いたのだけれど、
ここではあえて、2枚目を別枠にて・・・。
・・・というくらいCD1とは全く別の音楽に聴こえる。
なんともおとなしいツェートマイヤー。
かの「シャコンヌ」でわずかに抵抗を試みたように聴こえたが、
あとは、まったく普通のバッハである。
短調の音楽ならば、どのようにもドラマティックにできよう。
その後に控える長調の音楽にどれだけ深みを聴かせるか・・・。
ホ長調のあの楽しい舞曲たちをただ軽薄に弾くなら誰でもできよう・・・。(2017.07.05)
CD5〜6 無伴奏チェロ組曲
BWV1007 組曲第1番ト長調
BWV1008 組曲第2番ニ短調
BWV1009 組曲第3番ハ長調
BWV10010 組曲第4番変ホ長調
BWV10011 組曲第5番ハ短調
BWV10012 組曲第6番ニ長調
アーノンクール(チェロ)
ヴァイオリンに比べると、無伴奏のチェロは聴く機会がなぜか少ない。
しかし、ここでアー様参上!
一生懸命聴かねば・・・。
1965年、ウィーン響の一員でもあった、あるチェロ奏者のワン・シーン。
と聴けば無神経かと言われそうだが、
なんとも無手勝流に近い、朴訥としたバッハである。
ただ、面白いのは、第3番。第6番と、
各CDの最後の曲のテンションが一段高いような気がする。(2017.07.29)
CD7 ヴァイオリンとチェンバロのためのソナタ
BWV1014 ソナタ第1番ロ短調
BWV1015 ソナタ第2番イ長調
BWV1016 ソナタ第3番ホ長調
BWV1017 ソナタ第4番ハ短調
BWV1018 ソナタ第5番ヘ短調
A・アーノンクール(ヴァイオリン)、N・アーノンクール(ヴィオラ・ダ・ガンバ)
タヘッツィ(チェンバロ)
緩急緩急の4楽章からなる5つのソナタ群。
アー様ファミリーのユニットがバリバリと弾き進む。
夫人のヴァイオリンはなんとも艶やかで、肉感的!
第3番の第1楽章、なんとも高カロリーな音楽!
「ヴァイオリンとチェンバロ・・・」というくらいだから、
御大のガンバはやや控えめではある。(2017.09.02)
CD8 ヴァイオリンのためのソナタ
BWV1019 ソナタ第6番ト長調
A・アーノンクール(ヴァイオリン)、N・アーノンクール(ヴィオラ・ダ・ガンバ)
タヘッツィ(チェンバロ)
BWV1019a ソナタト長調
BWV1021 ソナタト長調
BWV1023 ソナタホ短調
ホロウェイ(ヴァイオリン)、シェパード(チェロ)
モロニー(チェンバロ、オルガン)
第6番のソナタは先の1枚の5曲とちょっと趣が異なる。
真ん中にチェンバロの独奏をはさんで、緩急ふたつの楽章がシンメトリックに並ぶ。
チェンバロにかかるウエイトが高い中間の3つの楽章は、
「ヴァイオリン独奏を伴う、チェンバロのためのソナタ」というところ。
6トラックからは演奏者が変わり、まずはBWV1019aとして、
第6番の後半3つの楽章の4つの異稿を聴くことができる。
いずれも最初の5トラックとは別物の音楽である。
BWV1021と1023は「・・・と通奏低音のための」というように、
ヴァイオリンにスポットが強くあたる音楽。
イギリスのプレーヤーが格調高く音楽を聴かせる。(2017.09.03)
CD9
ヴァイオリンのためのソナタ
BWV1025 組曲イ長調
BWV1026 フーガト短調
エールハルト(ヴァイオリン)、ハムビッツァー(チェンバロ)
ヴィオラ・ダ・ガンバとチェンバロのためのソナタ
BWV1027 第1番ソナタト長調
BWV1028 第2番ソナタニ長調
BWV1029 第3番ソナタト短調
アーノンクール(ヴィオラ・ダ・ガンバ)、タヘッツィ(チェンバロ)
最初の2曲、8トラックは残務整理か?
時に技術的にも怪しげな、なんとも単調なバッハである。
ガンバのソナタには、アー様登場!
ところが第1番、ガンバの音を覆わんばかりのチェンバロのトリルで始まる。
落ち着いて聴くと、スピーカーは左にチェンバロ、右にガンバと極端な定位感。
圧され気味のガンバは次第に主導権を握る勢いを聴かせるが、
第3番の終曲では、チェンバロに圧されつつアルバムを締めくくる。
どうした?アー様!!(2017.09.07)
CD10
フルート・ソナタ
BWV1030 ソナタロ短調
BWV1032 ソナタイ長調
BWV1034 ソナタホ短調
BWV1035 ソナタホ長調
シュタストニー(フラウト・トラヴェルソ)
アーノンクール(チェロ)、タヘッツィ(チェンバロ)
BWV1038 ソナタト長調
シュタストニー(フラウト・トラヴェルソ)、A・アーノンクール(ヴァイオリン)
N・アーノンクール(チェロ)、タヘッツィ(チェンバロ)
BWV1039 ソナタト長調
シュタストニー、ブリュッヘン(フラウト・トラヴェルソ)
アーノンクール(チェロ)、タヘッツィ(チェンバロ)
前半の三重奏はなんとも真摯なバッハ。
ゆったりめのテンポで、いろんな仕掛けを試みることより、
速めのテンポで、細工をする余裕を作らない姿勢が、
淡々と究極のバッハの世界を築き上げていく。
夫人の加わった四重奏は、ヴァイオリン・ファーストの中、
アー様が時にアグレッシブに底辺を支える。
意外なのはラストの四重奏。
トラヴェルソのダブルがなんとも、もっさりとしていまひとつ・・・。
(2017.09.12)
CD11
カノンとフルート・ソナタ
BWV1080/19 3つの主題によるフーガ(未完)
コープマン、マトー(チェンバロ)
BWV1072 8声のカノン
BWV1073 4声のカノン
BWV1074 4声のカノン
BWV1075 2声のカノン
BWV1076 6声のカノン
BWV1077 4声のカノン
BWV1078 7声のカノン
BWV1086 2声のカノン
ムジカ・アンティクヮ・ケルン
アーノンクール(チェロ)、タヘッツィ(チェンバロ)
BWV1013 ソナタト長調
BWV1031 ソナタト長調
BWV1033 ソナタト長調
ランパル(フルート)
ヴェイライン=ラクロワ(チェンバロ)
サヴァール(ヴィオラ・ダ・ガンバ)
「オール・ノン・TELDEC」チームによる1枚。
ますは、この全集で未聴の「フーガの技法」の未完のフーガ。
コープマンと仲間による堂々たる大伽藍は7分近くでぱたりと途絶える。
細かい動きの第2主題を”BACH”がゆったりとした流れで引き継いで、
さあ、これからというところでの中断はある意味衝撃的でもある。
MAKによるカノンはチェンバロ独奏による2曲を含む。
これだけ短い作品だと、さすがのゲーベルもあまり奇をてらうことはできなかったか?
BWV1073はこれより先に、スイングル・シンガーズによるものを聴いていて、
それが意外に端正な仕上がりだったので、ここで聴く演奏が柔和に聴こえて面白い。
最後にランパルによるソナタが3曲、本来はこのCDの最初に来るものでは?
そんな聴き手には全く関せず、
御大ランパルが、万全のバックと共に堂々たるバッハを繰り広げる。
(2017.09.17)
CD12
音楽の捧げもの
BWV1079 音楽の捧げもの
アーノンクール指揮
ウィーン・コンツェントゥス・ムジクス
やっと、ここまで来たか・・・。
バッハの作品としては、ガキの頃から慣れ親しんだ曲のひとつ。
レーデル指揮のLPを何度聴いたことか・・・。
このアーノンクールのCDも手許にあるのだが、
今なお一番手にするのはやはりレーデルのCDである。
1970年のアー様ファミリーは、意外と淡々と捧げものを紡いでいく。
この曲を演奏する最低の6人編成ということもあろうが、
彼らの同時期の他の演奏に比べると、刺激的な表現が控えめになっているように思う。
もちろん、そのことはこの曲にふさわしい雰囲気である。
ただ、あまりにも淡々としていて、
ひとまわり?大きい編成のレーデルの演奏の表現の幅の豊かさに、気持ちが向かう。
(2017.09.23)
CD13
フーガの技法
BWV1080 フーガの技法
タヘッツィ(オルガン)
ロ短調ミサへの苦手意識を克服した今、
最も苦手なバッハの(大作といえる)作品である。
フーガとカノンだけ1時間、それもひとつの楽器で淡々と・・・。
何が楽しいんだか・・・。
実に軽快、クリアなタヘッツィのオルガンがその思いを助長する。
もちろん、かのヘルシェンを始めとする、いろいろな演奏形態はあるようだけれど・・・。
ネットの時代、この曲について実に丁寧に解説してくれるサイトもある。
そこで気づくのは何より、楽譜に目を通すことが大事かなと・・・。
今回はこれまでとして、そのうち楽譜を見ながら、繰り返し聴く事にしようか・・・。
ただいま、遅い時間に改めて大音量で聴いてみると、意外な温もりも感じる音楽である。
(2017.09.25)