第4巻 教会カンタータ4
CD1 レオンハルト(150,151)、アーノンクール(151,152)指揮
BWV150 カンタータ第150番「主よ、われ汝を仰ぎ望む」(1708)
バッハのカンタータとしては最初期のものだそうだが、音楽のもつ緊密感は後年のものに劣らない。
コラールはないが合唱が多用されるのが特徴、他の曲も、音での音の動きが印象的なシンフォニア、
技巧的なソプラノのアリア、さらに三重唱とそれぞれユニーク。(2003.01.11)BWV151 カンタータ第151番「甘き慰めなるかな、わがイエスは来ませり」(1726)
女声のアリア、男声のレチタティーヴォ、終曲コラールと明快な構成。
解説には冒頭アリアのフルート・オブリガードに耳を奪われるとあるが、録音のせいか、埋もれ気味。
むしろ前曲に続いてハノーファーのボーイ・ソプラノの技巧、美しさの両面で秀でた歌唱に耳が向く。
(2003.01.13)BWV152 カンタータ第152番「出で立て、信仰の道に」(1714)
リコーダー、オーボエ、ヴィオラダモーレ、ヴィオラダガンバ、通奏低音という室内楽的な編成による。
声楽はソプラノとバスだけとこちらも簡素。時折オルガンがレチタティーヴォに厚みを持たせる。
特に終曲の二重唱での器楽のエキゾチックな?響きは他に聴かれないもの。(2001.5.23)BWV153 カンタータ第153番「見たまえ、御神、いかにわが敵ども」(1724)
いきなり単旋律のコラールで始まる。最初は152番の終曲かと間違えてしまった。
解説によればこのパターンは他にないとの事。中間のコラールの後のテノールのアリアが、
描写的で凝った音楽のほかは、穏やかな音楽が続く。(2001.01.25)
CD2 アーノンクール(154〜156)、レオンハルト(157)指揮
BWV154 カンタータ第154番「いと尊きわがイエスは見失われぬ」(1724)
鋭い付点のリズムを伴うテノールの第1曲、ひなびたオーボエの響きを伴うアルトの第3曲、
活発な動きを見せる二重唱のアリアと、強い押し出しはないが特徴のある3曲が並ぶ。
コラールは2曲、これも押し出しは少ない流れるような歌。(2003.02.03)BWV155 カンタータ第155番「わが神よ、いつまで、ああいつまでか」(1716)
レチタティーヴォに始まる。第2曲は二重唱となるが、ファゴットのオブリガードが技巧的に
活躍する。長いバスのレチタティーヴォの後にはソプラノが付点のリズムに特徴づけられた
器楽をバックに技巧的に歌う。合唱は最後のコラールのみ登場、前曲に続いて簡素な音楽。
(2003.02.06)BWV156 カンタータ第156番「わが片足すでに墓穴に入りぬ」(1729)
なんともインパクトのあるタイトルだ。始まったのはチェンバロ協奏曲の名旋律、
オーボエが「恋するガリア」を美しく歌う。続くコラール二重唱も美しい。
タイトルのわりには暗さはあまり感じられない。(2003.03.08)BWV157 カンタータ第157番「見たまえ、御神、いかにわが敵ども」(1724)
独唱は男声のみ、そのためか第1曲の二重唱から緊密な、厳しい雰囲気をもたらす。
続くテノールのアリアがその雰囲気を引継ぐ、後半は長調に変わりバリトンのアリアが軽やかに歌う。
最後のコラールも細かく、軽やかな動き。(2003.02.08)
CD3 レオンハルト(158,159)、アーノンクール(161,162)指揮
BWV158 カンタータ第158番「平安なんじにあれ」(〜1735)
4曲からなり、未完と推定されている。コラールを除いて全編にわたりバスのエグモントが、
息の長い歌唱で好演。特に冒頭のレチタティーヴォ後半から第2曲のヴァイオリンのソロを
伴うアリアにかけての音楽ののびやかさが印象に残る。(2003.02.11)BWV159 カンタータ第159番「見よ、われらエルサレムにのぼる」(1729)
受難を扱った作品。解説に見るテキストは「ヨハネ受難曲」を思わせる。
曲調は全体的にゆるやかだが、低音部はエルサレムへの歩みを刻むような動きを見せる。
(2003.02.16)BWV161 カンタータ第161番「来たれ、汝甘き死の時よ」(1716)
リコーダーが随所で活躍する。テノールのドラマチックなレチタティーヴォと、甘美ささえみせる
弦楽器の伴奏にのるアリアが音楽的には核となるが、ここだけはリコーダーはなりをひそめる。
締めには充実した合唱とコラールの2曲が続く。(2003.02.21)BWV162 カンタータ第162番「ああ!いまわれ婚筵に行かんとして」(1723)
婚宴のたとえを題材としている曲だが、テキストは信仰の選択を厳しく問う内容となっている。
先の3曲よりは厚手で劇的な響きで音楽は進む。後半の二重唱に救いの光が見えてくる。
ボーイソプラノが不調なのが残念。(2003.02.22)
CD4 アーノンクール(163)、レオンハルト(164〜166)指揮
BWV163 カンタータ第163番「各々に各々のものを」(1715)
編成自体には派手さはないが、全体を通して飛び跳ねるような細かいリズムが聴かれる。
前半は男声のアリア、後半は女声(ここではテルツのメンバー)の重唱、最後にコラールと明確な
順序だて。アーノンクールが選んだ独唱陣はいずれも好演。(2003.02.25)BWV164 カンタータ第164番「汝ら、キリストの者と名のる徒」(1725)
前曲に続いて地味な編成だが、音楽的には深さを持った1曲。冒頭のアリアの弦楽器の美しさ、
アルトのアリアによりそう2本のトラヴェルソの響きなど、聴くべきものが多い。二重唱、コラールと
続く各曲それほど長くなく、もう少し曲の展開があればとちょっと惜しい気もする。(2003.03.05)BWV165 カンタータ第165番「おお聖なる霊と水の洗礼よ」(1715)
冒頭フーガ調の器楽に始まる、シンフォニアかと思うとソプラノが歌いだす。
しかしここでのソロはちょっと不安定、バックもひっぱられるのか途中あやしげになる。
引き継ぐエグモントのレチタティーヴォも今回はちょっとぶれ気味、残る二人のアリアは◎。
特にアルトのエスウッドの深みのある声で歌うのが見事。(2003.03.08)BWV166 カンタータ第166番「汝はいずこに行くや」(1724)
この1枚、ずっと控えめな編成の作品が続いた。この曲も前半の簡素な響きが主調となる。
特に第2曲でオーボエ、ヴァイオリンのソロと絡むテノールのアリアの美しさはすばらしい。
室内楽的な曲調は後半、湧き立つような流れをもつアルトのアリアを効果的に聴かせる。
(2003.03.09)
CD5 アーノンクール指揮
BWV167 カンタータ第167番「もろびとよ、神の愛を讃えまつれ」(1723)
小さい編成ながら、しばらく続いた内面に向うような響きから、やや解放された感のする1曲。
パストラール風のテノールのアリアに始まり、オーボエ・オブリガードを伴う女声(少年)二重唱、
弦楽器が活発に動き回る終曲合唱と全曲をアーノンクールが活き活きと描いていく。(2003.03.17)BWV168 カンタータ第168番「務めの報告をいだせ!と轟く雷のことば」(1725)
第1曲弦楽器の鋭い響きが雷の叱咤を表す。全曲にわたり厳しい表情の音楽が並ぶ。
中間ではテノールが歌う恐れの心を、オーボエの響きが強調する。後半での女声二重唱では
通奏低音が飛び跳ねるような動きを見せる。(2003.03.19)BWV169 カンタータ第169番「神にのみ 我が心を捧げん」(1726)
冒頭シンフォニアと終結コラールをのぞきアルト独唱による1曲。オルガンが活躍する。
シンフォニアはオルガン・ソロによるチェンバロ協奏曲の転用。きびきびとしたリズムが心地よい。
アリアにも同じ曲からの転用が1曲、アルトはエスウッドが丁寧に歌う。(2003.03.23)
CD6 アーノンクール(170,172)、レオンハルト(171,173)指揮
BWV170 カンタータ第170番「満ち足れる安息、嬉しき魂の悦びよ」(1726)
合唱のない、アルト独唱のみによる曲。前曲と同時期の作だから、歌手に恵まれたのだろうか。
おや、と思ったのが終曲。ノリが「コーヒー・カンタータ」で、オルガンがオブリガードのように活躍する。
後年オルガンパートをフルートに書き換えたそうで、より「コーヒー・カンタータ」風だったろう。
(2003.03.24)BWV171 カンタータ第171番「神よ、汝の誉れは、その御名のごとく」(1729)
久々に聴くトランペットとティンパニの響き、威勢のいい合唱で開幕。ソロも4人そろう。
ふたつのアリアではヴァイオリンソロが細かな動きでソロに絡む。鳴り物の合いの手が入る
最後のコラールは何番だったかはさておき、かなり前に聴いたことがある音楽。
これは何番だ、なんてわかるとすごいのだけれど、そこはにわかマニアである。無理なこと。
(2003.03.26)BWV172 カンタータ第172番「歌よ、響け」(1714)
タイトルを見て、アーノンクール指揮ということで、派手な演奏を期待したが、ややおとなしめ。
ただし第3曲のバスのアリアで3本のトランペットが、ノー天気なくらいのめざましい活躍をする。
次のアリアのしっとりとした感じがコントラストをなすが、テノールのカエル声がいただけない。
(2003.03.31)BWV173 カンタータ第173番「高く挙げられし血と肉よ」(1724)
コーラスは終曲だけに登場。器楽部が充実していてリズミカルにソロを支える。特に後半の
二重唱と終曲は舞曲風で、器楽だけの部分が比較的長めにとられている。(2003.04.06)
CD7 アーノンクール(174)、レオンハルト(175,176)指揮
BWV174 カンタータ第174番「われいと高き者を心を尽くして愛しまつる」(1729)
数少ない予備知識のある曲。といってもシンフォニアにブランデンブルク協奏曲第3番の第1楽章を
転用しているというだけ。しかしオーボエのオブリガードが美しい第2曲、ヴァイオリンが技巧的活躍を
聴かせる第4曲と音楽的な興味はむしろシンフォニアの後へ向く。(2003.04.09)BWV175 カンタータ第175番「彼はおのれの羊の名を呼びて」(1725)
リコーダーを伴奏にした短いレチタティーヴォで始まる。ソプラノ省いた3人のソロがアリアを
のびやかに歌う。ただしここでの歌手たちはちょっと不安定で残念。最後のコラールもあまり気勢が
あがらない。もう少し元気があってもよいのではないか。ちなみに最後は古風なアーメンの繰り返しで
終わる。(2003.04.15)BWV176 カンタータ第176番「傲りかつ臆するは」(1725)
もう少し緊張感を帯びてよさそうな合唱が尻つぼみに終わる。また前曲のムードを引きずるのか?
禁欲的すぎないか?聖人レオンハルト!と感じたが、続く女声ソロのアリアはそれぞれ魅力的。
ところで、前曲とあわせてこの録音、終曲コラールで時折うなり声が聴こえるのはレオンハルトのものかしら?(2003.04.17)
CD8 アーノンクール指揮
BWV177 カンタータ第177番「われ汝に呼ばわる、主イエス・キリストよ」(1732)
冒頭合唱の充実感が大きい、アーノンクールががっしりとしたコーラスとしっとりとしたソロ楽器を
バランスよく聴かせる。合唱を両端に中3曲はすべてアリア。女声ソロパートを歌うテルツの少年が好演。(2003.04.20)BWV178 カンタータ第178番「主なる神われらの側にいまさずして」(1724)
「マタイ」の鞭打ちを思わせる鋭い付点リズムで始まる。コラール・カンタータだが、戦いがモチーフ
の曲ということだけあって、コラールの表情はきつく、それを縁取る音楽も、全体的に動きのある、かつ
強い口調のものになっている。単独のレチタティーヴォがないことも動的な面を際立たせている。(2003.04.25)BWV179 カンタータ第179番「心せよ、汝の敬神の偽りならざるかを」(1723)
解説書風にいうなら「古風なスタイル」?のフーガが冒頭合唱、レチタティーヴォは表情豊かだが、
続くアリアは比較的おとなしやかな曲が続く、おしまいの2曲では歌詞に”憐れみたまえ”の呼びかけが
幾度か聴かれ、耳に残る。(2003.04.30)
CD9 レオンハルト(180,181)指揮、アーノンクール(182)指揮
BWV180 カンタータ第180番「装いせよ、おお わが魂よ」(1724)
リコーダーの響きを中心に、柔和な雰囲気で全体を包まれた曲。拍子も3拍子系が目立つ。
テノール、ソプラノとアリアの充実が目立つけれど、ハノーファーの少年の歌はちょっと不安げ。
冒頭合唱の最初、たった2小節の動きがプロコフィエフの「アレクサンダー・ネフスキー」を思わせて、
妙に気になる。(2003.05.05)BWV181 カンタータ第181番「軽佻浮薄なる精神の者ども」(1724)
第1曲はアリア、レオンハルトの活きのいい伴奏をバックにエグモントが好演。
ぶ。トランペットのファンファーレで始まる終曲合唱もそうだけれど教会カンタータというよりは、
オラトリオに近い雰囲気がいい。アーノンクールがやったらどれだけ「お下劣」になったかと思うと、
ここにレオンハルトを持ってきたのは妥当な選択。(2003.05.10)BWV182 カンタータ第182番「天の王よ、汝を迎えまつらん」(1714)
テレマンのトリオ・ソナタかしら?と思う器楽曲がシンフォニア代わりに曲頭を飾る。
3曲目のレチタティーヴォの後は3つのそれぞれ表情の違ったアリア、2曲の合唱曲が続く。
終結合唱はコラールではなく、歩みも軽い感じで締めくくる。(2003.05.16)
CD10 アーノンクール(183,185)、レオンハルト(184)指揮
BWV183 カンタータ第183番「人びと汝らを除名すべし」(1725)
独唱が4声でそれぞれ1曲、最後にコラール、しかも1、3曲目はレチタティーヴォだから全体で
十数分と簡潔な作り。しかし冒頭厳しく警告を発するバスのレチタティーヴォに始まり、
チェロ、オーボエといった器楽陣の活躍が目立つ聴きごたえのある1曲。(2003.06.05)BWV184 カンタータ第184番「待ちこがれし喜びの光」(1731)
第2曲の9分に至る二重唱をはじめ、こんどは長大な?曲がならぶ。
レチタティーヴォも旋律的で全体的に歌に満ちた活発な動きのある曲になっている。
第1曲のフルート、第4曲のヴァイオリンなど器楽陣も楽想にあわせ軽やかに動き回る。
素敵なコラールの後にもう1曲重唱つきの合唱曲がもうひとつおまけに付く。(2003.06.08)BWV185 カンタータ第185番「永遠の愛の憐れみ満てる心」(1715)
冒頭に重唱、終曲にコラール、間にはアルトとバスがレチタティーヴォ付きアリアを歌う。
中間のアルトのアリアの豊穣感がすばらしい。終結のコラールは最後に半終止のブレーキがかかる
(2003.06.15)
CD11 アーノンクール(186)、レオンハルト(187)指揮
BWV186 カンタータ第186番「魂よ、躓くなかれ」(1723)
2部構成全11曲の大作である。冒頭合唱で”nicht””licht”といった韻の強調が耳につく。
鳴り物入りの派手さは皆無だが、全般に音符が多目の曲が多く、付点リズムも多用される。
アーノンクールがその細かく流れのある音楽をさらに際立たせる。
3曲のアリアはいずれも魅力的で、ボーイソプラノを含め歌手たちも好演。(2003.07.13)BWV187 カンタータ第187番「彼らみな汝を待ち望む」(1726)
2部構成の作品が続く。冒頭合唱は長い器楽の序奏に始まる。
こちらはレオンハルト指揮、几帳面な音楽作りは前曲の指揮とは全く対照的。
音楽そのものもややなだらかな曲線を描く。この1枚の2曲、指揮者が逆だったらと想像すると、
それはそれで面白そうではある。(2003.07.30)
CD12 アーノンクール指揮
BWV188 カンタータ第188番「われはわが依り頼みを」(1728)
心地よい速さで演奏されるチェンバロ協奏曲によるシンフォニアで始まる。
続く3つのアリアの叙情感がシンフォニアの快活さと対比をなしている。
特に第2曲の長いテノールのダ・カーポアリアの旋律が美しい。(2003.08.09)BWV192 カンタータ第192番「いざやもろ人神に感謝せよ」(1730)
ソプラノとバスの二重唱をはさむ合唱、3曲からなる短い曲。
明るく力強い両端の合唱に、健康的な二重唱がタイトルにふさわしい楽想で
神の恵みへの感謝を歌う。ところで189から191番はどうしたんだろう?(2003.08.14)
CD13 アーノンクール(194)、レオンハルト(195)指揮
BWV194 カンタータ第194番「こよなく待ちこがれし喜びの祝い」(1723)
このあたりの欠番のうちBWV189は偽作、その他は世俗カンタータの巻で聴けるらしい。
とはいえこの曲も世俗カンタータのパロディのようで、なじみやすい旋律の曲が並ぶ。
(2003.08.20)BWV195 カンタータ第195番「光は義しき人のために射し出で」(1730前後)
鳴り物付きの結婚式用の作品。宗教カンタータも大詰めにくると、世俗との境目があいまいに
なってくるのだろうか。BWV番号のつけ方がそもそも作品を系統分けしたものだけにやむをえない。
かといって、作曲年代別の作品番号付けプランが出すには作曲年代の確定はむずかしいし、
現行のBWV番号は定着しているからやりにくい、といったところか。
音楽は194番もそうだが、明朗な3拍子系の音楽が目立つ。素人の自分が聴く分には楽しいが、
玄人の人に言わせれば、俗っぽい凡作ということになるかもしれない。(2003.08.22)
CD14 アーノンクール(196)、レオンハルト(197)指揮
BWV196 カンタータ第196番「主はわれらを御心に留めたまえり」(1708)
これも結婚式用のカンタータ。冒頭シンフォニアの付点音符の多用をはじめ、活気のあるリズムが
明るい雰囲気を引き立てる。少し憂いを含んだ中間のアリアと二重唱もリズムの呪縛から外れない。
やる気になれば少しどぎつい事ができそうな曲だが、ここでのアーノンクールは恐ろしいほどに穏やか。
終結合唱の「アーメン」の連呼も高らかにではなく、あくまでもやさしさが基調と聴いた。(2003.08.30)BWV197 カンタータ第197番「神はわれらの確き望みなり」(1736/7)
二部からなる結婚式用の大曲。トランペットのファンファーレを伴うおおがかりな合唱ではじまるが、
2曲目からは華やかさは影をひそめ、神への祈りを織り込みながら婚礼の喜びを祝う。
このあたりが宗教カンタータたる由来かと納得。後半登場するソプラノのハノーファーの少年の声が
いい雰囲気だが、時折声がひっくり返るのが残念。(2003.09.04)
CD15 レオンハルト(198)、アーノンクール(199)指揮
BWV198 カンタータ第198番「公妃よ、なお一条の光を」(1727)
ザクセン選帝侯夫人の追悼のための作品。当時国民が4ヶ月喪に服したというから一大事である。
音楽も二部構成全10曲の大掛かりなもの。曲全体に盛り込まれた悲しみの影は深いもので、
宗教カンタータとは一線を画している。第5曲で聴かれるガンバとリュートの響きが美しい。
一条の光は終曲の合唱で差し込んでくる。(2003.09.12)BWV199 カンタータ第199番「わが心は血の海に漂う」(1713)
宗教カンタータの巻最後の曲である。よくがんばったなー。ところがである。独唱B・ボニー?
ちょっと待て、今まで大人のソプラノって使ってたっけ?実に心地よい、すばらしい歌である。
しかし今まで聴いてきた「宗教カンタータ」とは全く異質の世界が広がる。もちろんバッハはバッハ。
けれどもちょっと違うんでないかい?ちょっと技巧的にも高度なのは認めるけれども。
1913年に発掘された曲。名演ではあるけれども、この場所にはふさわしくない。(2003.09.20)