第2巻 教会カンタータ2
CD1 アーノンクール(48〜50)、レオンハルト(51)指揮
BWV48 カンタータ第48番「われ悩める人、われをこの死の体より」(1723)
第1曲は弦楽器の落ち着いた響きに合唱が加わり。管楽器がコラールを奏す。
声の方は重唱にすると響きが美しそう。
4曲目と6曲目のアリアは関連付けられた楽想を持つが特に6曲目の変拍子風なところがが印象的。(2001.9.7)BWV49 カンタータ第49番「われは行きて汝をこがれ求む」(1726)
チェンバロ協奏曲のフィナーレをパロディにしたシンフォニアでソロを受け持つオルガンが随所で活躍する。
合唱を用いずソプラノとバスの二重唱で進められる曲。ここでもイェロージッツの好演が際立つ。
バスのデル・メールはややのっぺりとした歌唱。(2001.9.9)BWV50 カンタータ第50番「いまや、われらの神の救いと力と」(1723)
合唱曲ただ1曲のみ残された作品。モーツァルトのコミカルなカノンのような跳躍を見せるバスから始まり、次第にティンパニ、トランペットを加えて華々しく盛り上がる。(2001.9.11)BWV51 カンタータ第51番「全知よ、神にむかいて歓呼せよ」(1730)
ソプラノ独唱のためのカンタータ。
トランペットと歯切れのいい弦楽器のパッセージで始まる第1曲目に「これはアルノンクールでしょう」と
思うのだけれど、聖人?レオンハルトもここではけっこう力を入れていて、押しの強い音楽聴かせる。
独唱はここでは大人の歌手。穏やかな曲でも技巧的な部分のある華麗なソロをちょっと力みがちだけれども上手にこなしている。
アタッカではじまる終曲「アレルヤ」が駆け巡るように曲を締めくくる (2001.9.14)
CD2 レオンハルト指揮
BWV52 カンタータ第52番「偽りの世よ、われは汝に頼まじ」(1726)
いきなり始まるのはブランデンブルグ協奏曲第1番の第1楽章。
パロディについての予備知識がないと驚いてしまいそうなカプリングの1枚。
ソプラノのための独唱カンタータだが終曲はコラール合唱。
アーノンクール&イェーロジッツコンビに変わり、
レオンハルト&テルツ少年合唱団のクローンヴィター君が技巧的に厳しい曲を好演。(2001.9.16)BWV54 カンタータ第54番「罪に手むかうべし」(1714)
アルトの独唱カンタータでこちらは合唱なし。
というより二つのアリアがレチタティーヴォをはさんでいるだけの簡潔な構成。
そのため一時は断片ではないかと推定されていたらしい。
第1曲の罪に対抗する意志を表すかのようなリズムの確固とした動きが力強い。
二つ目のアリアでは半音階の下降音形が聴かれるが、
自分にはモーツァルトの弦楽四重奏曲の第13番を連想させる。(2001.9.17)BWV55 カンタータ第55番「われ哀れなる人、われ罪の下僕」(1726)
現存する唯一のテノール独唱用のカンタータとのこと。
このシリーズのエース!エクヴィルツがじっくりと聴かせる。
ただ、途中のアリアでトラヴェルソにアーノンクール調?のアクのあるアクセントが聴かれる。
レオンハルトらしくないし、アーノンクールがやったにしてもやや下品すぎ。(2001.9.19)BWV56 カンタータ第56番「われは喜びて十字架を負わん」(1726)
有名なバス用のカンタータ。息の長い旋律が特徴といえるが、自分にはやや退屈。
ショッパーというバスも、ビブラート過多で高音の響きや語尾に上品さが欠けている。
エグモントを使えなかったものか?(2001.9.20)
CD3 アーノンクール指揮
BWV57 カンタータ第57番「試練に耐うる人は幸いなり」(1726)
試練に耐えることを歌う前半は穏やかに、来世を歌う後半になってテンポの速い活気のある曲調となる。はずむようなリズムの終曲コラールも印象的。
ここに聴くアーノンクール&イェーロジッツコンビ。レオンハルト&テルツの少年コンビに比べ高い完成度を見せている(2001.9.25)BWV58 カンタータ第58番「ああ神よ、いかに多き胸の悩み」(1727)
唯一の独唱曲である第3曲のソロ・ヴァイオリンを伴ったソプラノのアリアが魅力的。
両端楽章ではソプラノのコラールとバスのゆったりとした歌を、伴奏が表情豊かにささえている。(2001.9.27)BWV59 カンタータ第59番「人もしわれを愛すれば、わが言を守らん」(1724)
祝日用のカンタータということで、冒頭曲にトランペット、ティンパニが参加しているが、
あとは弦楽器だけという編成だけに派手さはない。
曲の構成も途中にコラールがあり本来は大掛かりな作品を予定していたのではないかと思わせる。(2001.9.29)BWV60 カンタータ第60番「おお永遠、そは雷のことば」(1723)
冒頭こまかい動きの弦の上にーボエが明るく軽やかな動きで入ってくる。
この1枚は開幕がおとなしめの曲で始まる曲が続いたので新鮮に聴こえる。
対話形式で進む曲だが、終盤にイエスの声でバスが割ってはいる。
短いがその声の温かみのある音楽が見事な効果を上げている。(2001.10.5)
CD4 アーノンクール指揮
BWV61 カンタータ第61番「いざ来ませ、異邦人の救い主」(1714)
ドラマティックな冒頭合唱で始まる名曲。前半はそれにふさわしい演奏が繰り広げられる。
しかし5曲目でソプラノに大事なアリアがくるのだが、ここでのテルツの少年が絶不調。
心穏やかに聴くにはかなりつらいものがある。続く終曲の合唱もやや腰砕け気味でいただけない。
どうした?アーノンクール?!(2001.11.11)BWV62 カンタータ第62番「いざ来ませ、異邦人の救い主」(1724)
前曲と同じタイトルでこちらが10年ほど後の作品。知名度はこちらのほうが低いと思うが、
後年のものだけに音楽の安定感というか確信に満ちたという点では、上ではないかと思う。
演奏もこちらはソロはないもののソプラノにイェロージッツを迎え、手堅くまとめた感がある。
この同名異曲の仕上がりの違い、もしかするとアーノンクールの作戦かとも勘繰ってしまう。
(2001.11.15)BWV63 カンタータ第63番「人もしわれを愛すれば、わが言を守らん」(1714)
この日とは降誕の日、よってクリスマス・カンタータである。
はなやかな冒頭合唱の後は、やさしさに満ちた曲想が続く。
終曲も金管、打楽器が加わるがそれほど大騒ぎしない。(2001.11.16)
CD5 アーノンクール(64〜65)、レオンハルト(66)指揮
BWV64 カンタータ第64番「見よ、父のわれらに賜いし愛の」(1723)
クリスマス用のカンタータというものの、内容的には内省的なもので、華やかさはあまり感じられない。
”Sehet"を強調した冒頭合唱などはむしろ受難曲でも始まりそうな雰囲気。
曲の核心となるのはヴァイオリン・ソロを伴ったソプラノのアリア。
例によってイェロージッツが好演。(2001.12.22)BWV65 カンタータ第65番「人々シバよりみな来たりて」(1724)
冒頭ホルンとリコーダーが牧歌的な雰囲気をかもしだす、これもクリスマス用のカンタータ。
先のふたつのパートは後半のテノールのアリアでもやわらかな彩りを加える。
終曲は、おなじみの旋律線をもつコラールが締めくくる。(2001.12.23)BWV66 カンタータ第66番「喜べ、汝らもろ人の心よ」(1724)
世俗カンタータからの改作。元の作品に自身があるから転用するわけで、
こうしたパターンは基本的にいい曲が聴けるかと思う。
冒頭曲は中間に重唱部分をもつ華やかな合唱曲。
トランペットの華やかなテーマを
ヴァイオリンと管楽器が細かい動きでもりあげる。
ヴァイオリン・ソロを中心とした簡素な編成ながら後半の二重唱が聴きどころ。
(2001.12.24)
CD6 レオンハルト(67)、アーノンクール(68〜69a)指揮
BWV67 カンタータ第67番「死人の中より甦りしイエス・キリストを覚えよ」(1724)
復活祭用のカンタータ。明朗快活な曲想がキリスト者の内面と外面での葛藤を表現する。
弦の細かい動きにのって戦いをうたう合唱と、キリストの言葉をおだやかにはさみこむ
バスとの対話曲が印象的。(2001.12.29)BWV68 カンタータ第68番「げに神はかくまで世を愛して」(1725)
曲を特徴付けているのは狩のカンタータの転用をした2曲といえるが、
むしろ冒頭にシチリアーノ調、終結にはフーガとおかれた合唱曲が全体を引き締めていて、
自分の興味もそちらのほうへ向いた。(2001.12.30)BWV69 カンタータ第69番「わが魂よ、主を頌めまつれ」(1748)
次の69からの改作ということで、第1曲と第5曲がCDでは省かれている。
せっかくの全集なのに、特に冒頭合唱がないというのは中途半端、
ここは再録して補完してほしいところ。プレーヤーのプログラム機能を使えということか?
3曲目(CDでは2曲目)のアリアでは、合間に”Oh du liever Augstin”
(結構有名で日本ではなんて歌ってたか忘れました)に似たフレーズが聴かれる。(2002.1.4)BWV69a カンタータ第69番a 「わが魂よ、主を頌めまつれ」(1723)
太鼓にラッパと賑やかな冒頭合唱から始まる。これが先の曲の頭にくる訳だ。
第3曲では先にはアルトが歌った”・・・Augstin”をテノールが歌う。
レチタティーヴォは前曲の方が少し俗っぽい言葉使いになっている。
前曲で省かれた第5曲のアリアは3連符を基調にしたこまやかな伴奏部が美しい。
終曲のコラールは前曲が太鼓付きで華やかなものだったが、
こちらはラッパだけでしめやかに終る(2002.1.4)
CD7 アーノンクール(70〜72)、レオンハルト(73)指揮
BWV70 カンタータ第70番「目を覚まして祈れ!祈りて目を覚ましおれ」(1723)
冒頭随分と俗っぽい響きのラッパが聴かれる。それをアーノンクールさらに誇張する。
曲は二部構成の11曲。バスのレチタティーヴォが最後の審判をダイナミックに描く。(2002.1.8)BWV71 カンタータ第71番「神はいにしえよりわが王なり」(1708)
神への賛歌をダイナミックに歌う合唱と豊かに歌う重唱のからみがすばらしい両端合唱。
間に続くソロや重唱もなじみやすい響きが続く。(2002.1.10)BWV72 カンタータ第72番「すべてはただ神の御心のままに」(1726)
先の2曲とは趣が変わり、落ち着いた響きの冒頭合唱で始まる。
それぞれ器楽ソロを伴ったアルト、ソプラノの美しいアリアがすばらしい。(2002.1.15)BWV73 カンタータ第73番「主よ、御心のままに、わが身の上になし給う」(1724)
第72番に似た雰囲気ではじまる冒頭。こちらは男声のアリアが間にはいる。
オルガンの活躍をはじめ、器楽パートのユニークさが際立つ。オーボエの例によって技巧的な
オブリガードの付いたテノール、途中ピツィカートも聴かれる落ち着いたバスと対照的な2曲。(2001.1.18)
CD8 レオンハルト指揮
BWV74 カンタータ第74番「人もしわれを愛せば、わが言を守らん」(1725)
冒頭合唱は聴いたことあるような曲。と思えば同名の第59番の転用。
4人のソロがそれぞれ趣向をこらしたアリアを歌う。エクヴィルツ、エグモントとエースが二人そろった
男性陣が見事。(2002.1.20)BWV75 カンタータ第75番「乏しき者は食らいて」(1723)
バッハのトーマス教会カントライとしてのデビュー作で全14曲の大作。内容のためか、
速いテンポ、舞曲風のリズムを採用していても華やかさ、力強さをおさえたおちついた基調の曲。(2002.1.25)
CD9 アーノンクール(76、78)、レオンハルト(77)指揮
BWV76 カンタータ第76番「もろもろの天は神の栄光を語り」(1723)
前作の次の週に演奏されたトーマス教会第2作。これも2部構成全14曲の大作である。
こちらはタイトルどおり対照的にスケールも大きく起伏にとんでいる。冒頭合唱からして構えが違う。
ちなみにタイトル=冒頭の一節はハイドンの「天地創造」で使われている。
ついでに第3曲のソプラノのアリアの飛び跳ねるようなリズムはモーツァルトの「魔笛」で聴かれる。(2002.1.26)BWV77 カンタータ第77番「汝の主なる神を愛すべし」(1723)
「愛」について考察した作品、厚みのある冒頭合唱に続く各曲のテキストに「愛」の文字がみられる。
第3曲での2本のオーボエが美しい、しかしこの曲で使われたのはオーボエ「・ダ・モーレ」ではなかった。
(2002.1.26)BWV78 カンタータ第78番「イエスよ、汝はわが魂よ」(1724)
最初の2曲で10分を要する。冒頭合唱は立派でいいのだが、第2曲はちょっと長すぎ。
「まだやってたの?」という感じ。後半フルート・ソロを伴う第4曲、オーボエを伴う6曲と
素敵な曲が続く。(2002.1.26)
CD10 レオンハルト(79)アーノンクール(80〜82)指揮
BWV79 カンタータ第79番「主なる神は日なり、盾なり」(1725)
ホルンとティンパニをともなった勇壮な合唱曲の間にソロがはさまる。
解説には「牧歌的」とあるのだけれど、太鼓が派手なのであまり牧歌的には聴こえない。
そしてこの鳴り物を派手に鳴らしているのは、聖人?レオンハルトだったりするのがうれしい。
(2002.2..3)BWV80 カンタータ第80番「われらが神は堅き砦」(1724)
前曲に続き、宗教改革の記念日のための曲。そのせいか猛々しいというか活動的な響きが目立つ曲。
第1曲のフーガ、第2曲の重唱、第5曲のコラールファンタジーといずれもオケの細かい響きを伴奏に
意欲的な音楽が続く。それ故に間のソロの叙情性が際立つ。(2002.2.5)BWV81 カンタータ第81番「イエスは眠りたもう、わが望みはいずこにありや」(1724)
ぐっと渋く始まる、管楽器がリコーダー、オーボエ・ダモーレ各2本とこれだけでもう涙がでそう。
しかし第3曲、第5曲では荒れ狂う波濤をあらわす描写がすばらしい。独唱陣も好演。(2002.2.7)BWV82 カンタータ第82番「われは足れり」(1727)
ひさびさの独唱用カンタータ、フッテンロッハーはかなり昔に生を聴いたことがある人。
やさしさのある声なのだけれど、今ひとつ底が浅い。ここはエグモントで聴きたかった。(2002.2.9)
CD11 アーノンクール指揮
BWV83 カンタータ第83番「喜び満ちし新しき契約の時」(1724)
全編に喜びに満ちた響きがあふれるマリアの祝日のための1曲。
冒頭はホルンとヴァイオリンの響きがブランデンブルグ協奏曲の第1番を思わせる。
第3曲ではヴァイオリンが無窮動的な動きで活躍する。男声陣が活躍。(2002.2..17)BWV84 カンタータ第84番「われはわが命運に満ちたれり」(1727)
ソプラノ用の独唱カンタータ。テルツのヴィードル君が好演。
伴奏は管楽器がオーボエ1本だけ、このオーボエが実に素晴らしい。
それにしてもなんとわが身にしみる歌詞(教え)ではある。(2002.2.17)BWV85 カンタータ第85番「われは善き牧者なり」(1725)
管楽器はオーボエが2本。冒頭第84番の第2部かな?と錯覚するような曲想。
しかし歌いだすのはバス。第2曲の小型チェロ、第3曲のオーボエ、
それに第5曲の流れるような弦楽器と器楽パートが充実。(2002.2.20)BWV86 カンタータ第86番「まことに、まことに汝らに告ぐ」(1724)
アリオーソに始まる短い作品。全体的に器楽パートが活発に動き回る。
ソロ・ヴァイオリンが前曲の小型チェロにまけない技巧を披露する。(2002.2.22)
CD12 アーノンクール(87)、レオンハルト(88〜90)指揮
BWV87 カンタータ第87番「今までは汝らなにをもわが名によりて」(1725)
思索に満ちた趣の曲。オーボエのため息のようなオブリガードのついた第3曲、
シチリアーナ風に弦楽器が揺れ動く第6曲と二つのアリアが美しい。
一方で冒頭のアリオーソなどまだまだ湧き出るような楽想を突然堰きとめてしまったようで
中途半端なところもある。(2002.2.24)BWV88 カンタータ第88番「見よ、われは多くの漁る者を遣わし」(1726)
冒頭の長いアリアでエグモントが好演。前半は海の波打つようなリズム、
後半は金管楽器が加わり狩の描写ですなどる人のイメージを伝える。
ちなみにこの後半、間奏部分でブランデンブルグの第2番第1楽章そっくりの場面が聴かれる。
全体は2部構成で、後半ではソプラノとアルトによる二重唱の細かい動きが印象的。(2002.3.5)BWV89 カンタータ第89番「われ汝をいかになさんや、エフライムよ」(1723)
冒頭は「ホルン信号」といったところか。技巧的なソプラノ、オーボエのオブリガードを
伴ったソプラノのアリアに彩られた短めの1曲。前曲とこの曲ではハノーファーのボーイソプラノが
好演。罪がテーマということで厳格な響きのコラールで閉じられる。(2002.3.10)BWV90 カンタータ第90番「怖ろしき終わり汝らを引きさらう」(1723)
タイトルどおり「最後の審判」があつかわれる。第1曲から弦楽器が激しい動きを聴かせる。
第3曲でバスがラッパを伴って激しい描写がなされる。(2002.3.13)
CD13 レオンハルト(91、92)アーノンクール(93)指揮
BWV91 カンタータ第91番「讃美を受けたまえ、汝イエス・キリストよ」(1724)
12月25日初演というからクリスマス用の曲。ホルン、オーボエ、ティンパニがにぎやかな
冒頭合唱はそれこそ狩のカンタータの趣。
とはいえ全体的には祝祭的な雰囲気は控えめな曲調で、冒頭曲と同じ編成の終曲のコラールも
短くおごそかな感じ。間のアリアと二重唱で器楽が付点のリズムを基調にしているのが印象的。
(2002.4.8)BWV92 カンタータ第92番「われは神の御胸の思いに」(1725)
全体の基盤となるのは「マタイ受難曲」でも聴かれる旋律のコラール。
ほとんどの曲に登場してこの曲を特徴付ける。中でもコラールとレチタティーヴォが交互に続く
つくり(トロープス技法というらしい)の第2曲を一人で歌い分けるエグモントがすばらしい。
直接コラールが現れないアリアもそれぞれ趣向のこらされたもので、規模、内容ともに充実。
(2002.4.11)BWV93 カンタータ第93番「尊き御神の統べしらすままにまつろい」(1724)
これもコラールカンタータ。8分の12拍子の躍動感あふれたダイナミックな合唱で始まる。
先のトロープス技法によるコラール付レチタティーヴォが2曲、ソプラノ独唱が活躍の場が多いが、
ここでのテルツのボーイ・ソプラノはちょっとキンキンとして子供っぽくいただけない。(2002.4.15)
CD14 アーノンクール指揮
BWV94 カンタータ第94番「われいかで世のことを問わん」(1724)
冒頭合唱はコラール付フルート協奏曲といったところか、ただ締めくくりが唐突で驚く。
続く各曲もそれぞれにバラエティに富んだ編成、曲想なの楽しめるのだけれど、
むしろそのせいか印象がきまらない。弦楽器を中心にした第6曲の8分の12拍子の流れるような
リズムが魅力的。(2002.4.17)BWV95 カンタータ第95番「キリストこそわが命」(1723)
バッハらしからぬ?シンコペーションが目立つ冒頭合唱で始まる。
驚くのは第5曲のアリア、テノールソロとオーボエダモーレのオブリガードを弦楽器が
シュトラウス父子の名曲をうわまわる密度のピツィカートで支える。
終曲コラールでヴァイオリンだけが主旋律をはなれ、曲に彩をそえる。(2002.4.19)BWV96 カンタータ第96番「主キリスト、神の独り子」(1724)
冒頭合唱でソプラニーノリコーダーがきらきらと輝くような響きを添える、後半のアリアでは、
エクヴィルツ、エグモントのこの全集の2枚看板がそれぞれ力唱を聴かせる。(2002.4.20)
CD15 アーノンクール(97、99)レオンハルト(98)指揮
BWV97 カンタータ第97番「わがなすすげての業に」(1734)
ダイナミックな冒頭部はバッハというよりはヘンデルのオラトリオのシンフォニア。
序奏が終わり主部がはじまるかと思うとコラールが滑り込むように入り込んでくる。
各アリアを独奏、合奏とも充実した器楽が支えるが、なかでも第4曲のダブル・ストップを
多用したヴァイオリンのソロのがなんとなく色っぽい?(2002.4.22)BWV98 カンタータ第98番「神なしたもう御業こそいと善けれ」(1726)
ここから3曲同じタイトルの曲が三つ続く。3拍子の冒頭コラールがおおらかに歌い、
オーボエを伴った美しいソプラノのアリア、毅然と神への信頼を歌うバスのアリアが続く。
ただここでのエグモントはちょっと細かいビブラートが気になる。
終曲にコラールをおかない構成。(2002.4.27)BWV99 カンタータ第99番「神なしたもう御業こそいと善けれ」(1724)
第1曲はパストラール風のコラール付合奏協奏曲といったところか。
全曲を通してフルートが活躍していて、第1曲はもちろん続くテノールのアリア、
二重唱でも技巧的なオブリガートを聴かせる。こんどはコラールがついて曲を閉じる。
BWV番号とは逆に曲の成立自体はこちらが前曲より先。
シリーズ2曲目ながらここでこの全集は第2巻を区切る。(2002.4.29)